クライマー天国で岩登り満喫  ノベ☆スタファイルNo.1・三澤澄男さん

日豊海岸、祖母・傾という2つの国定公園に囲まれたひむかエリア(宮崎県北地域)には、九州ナンバーワンの海、山、川があり、その抜群のポテンシャルを生かしたアウトドア体験が堪能できる。そのひむかエリアの自然をフィールドに、“ホンモノ”の感動体験を案内しているが「NPO法人 ひむか感動体験ワールド」(愛称・ノベ☆スタ、高橋勝栄理事長)だ。現在、34人のノベ☆スタが活動している。ひむかの自然を知り尽くしたノベ☆スタを紹介していく。第1回は、山のエキスパート・三澤澄男さん(73)=延岡市北方町上鹿川在住=。

 

九州最後の秘境といわれ、そそり立つ岩峰群が圧倒する大崩山(1644m)、ロッククライミングの聖地・比叡山(760m)、日本一の一枚岩からなる高さ350mの大岸壁(大スラブ)が圧巻の鉾岳(1277m)……。ひむかエリアは、ロッククライミング(アルパインクライミング)愛好者にとってまさに天国だ。

 


19歳で山登りを始めた。昭和36年に比叡山のルートを開拓したのを最初に、大崩山、鉾岳、行縢山など次々にクライミングルートを開拓してきた先駆者として知られる。穂高、八ヶ岳、剣岳など国内の名山はもとより、欧州三大北壁、ヒマラヤ、アメリカ・カナダ、韓国など、世界の山々にも挑み、昭和52年には宮崎県在住者だけのパーティーで初めてマッターホルン(4478m)北壁登攀(とうはん)に成功した。


平成23年9月には比叡山で、その偉業をたたえる「1峰南面初登攀50周年記念ロッククライミング」が開かれた。平成4年に鹿川に自費で開設した山荘「庵・鹿川」は、県内外から年間500~1200人が訪れるクライマーの拠点になっている。

 


三澤さんは「大スラブがある鉾岳の雌鉾(めんぽこ)、県道からすぐ岩場に取り付ける比叡山など、これだけいい花崗岩の岩場が集中している場所は全国にもそうない。特に鉾岳、比叡山は初級から上級までのいろんなルートが拓かれており、岩が硬く、摩擦が利くので、岩登りを始めるには絶好の場所」と、延岡周辺の山々の魅力を訴える。
しかしながら、三澤さんが運営する「庵・鹿川」を訪れるクライマーは、北海道、関東、関西、九州北部など、大半が県外者なのが現状。「地元のクライマーが少ないのが残念。特に若い人にもっとクライミングの楽しさを知ってほしい」と嘆く。
それだけに「山歩き自体は一人でもできるが、ザイル、ハーネス、ナッツ、アセンダーなど様々な道具を駆使するアルパインクライミングは、まずいい指導者に付いて様々な技術を習得することが大切。岩登りに精通する山岳会に入会し、技術指導を受けながら取り組むのが最善」とアドバイス。さらに「あとはやる気の問題。クライミングはキチンと順序を踏んでいけば、けして危険なスポーツではない」と言い切る。
もちろん、ロッククライミングだけでなく、一般登山(トレッキング)、沢登り(リバートレッキング)などにも精通する三澤さん。ノベ☆スタとして、ひむかエリアの山々の案内はもとより、矢筈岳トロッコ道や鹿川周辺の紅葉ポイントの案内などにも取り組む。


三澤さんは「山登りの基本は足腰。自分の体重を上に持っていかないといけないので体力がいる。日常的にウォーキングを心がけたり、近場なら愛宕山や行縢山を歩くのもいい訓練で、そうしているうちに祖母・傾の縦走などもできるようになってくる」と強調。「山は楽しく登らないと。気のあった仲間、グループで楽しく行くのがいい。ただし、アウトドアは自己責任の世界。自分の身に起こったことはできるだけ自分で処置できるようにしておきたい。それをわきまえた上で山登りを楽しんでほしい」と呼びかけている。

 

【三澤澄男(みさわ・すみお)さん】

高千穂町向山出身。高千穂高校から大蔵省南九州財務局(現在の財務省九州財務局)に入庁。宮崎、熊本、東京などで勤務し、鹿児島勤務を最後に退官し都城信用金庫に入り、翌年から17年間にわたって理事長を務めた。退官後の平成21年7月に延岡市北方町上鹿川に転居した。

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